新春特別セミナー2024を開催しました。
北九州市立大学
中華ビジネス研究センター
新春特別セミナー2024
テーマ:東アジア地域内の経済連携と直接投資の促進効果
日 時:2024年3月15日(金) 13:30-17:10
会 場:北九州市立大学北方キャンパス
フランキー・ウー・アジア国際交流ホール
北九州市立大学中華ビジネス研究センター、地域戦略研究所アジア地域連携部門共催、北九州商工会議所、日刊工業新聞社後援の新春特別セミナー2024(第8回目)は、本学北方キャンバス内のフランキー・ウー・アジア国際交流ホールで5年振りに対面方式で、成功裡に開催された。
本セミナーのテーマ設定の趣旨は地域紛争、貿易摩擦、産業科学技術競争の激化などグローバル的不確実要因が地域間連携交流に影を落とす中、巨大半導体メーカーTSMCの九州進出が、低迷が続く日本経済に成長の記憶を呼び起こしてくれたことを捉え、九州と東アジア地域との強靭な協力スキームの再構築・維持を求めるものにある。
日本と海外から学術界を代表する交流先の学者や専門家8名が加わるパネリスト計10名が参加し、前半と後半の二セッションに分けた討議方式で行われた。開会の代表挨拶は本学の柳井雅人学長が行い、モデレーターは大阪経済大学経済学部福本智之教授(第一セッション)と中華ビジネス研究センター長 王効平教授(第二セッション)が務め、全体司会はセンター特任研究員藤高美海が務めた。
第一セッションでは、「域内直接投資の連携促進効果」をテーマに、福本智之教授による問題提起をもとにパネルディスカッションが行われた。パネリストの北九州市片山憲一副市長が、九州地域経済における直接投資の効果、北九州市への影響、本市の取り組みと課題について具体的に紹介した。南洋理工大学(シンガポール)の劉宏副学長(兼公共管理大学院長)が、ASEANにおける華人系資本の投資動向、直接投資を媒介とした経済連携の成功事例を紹介し、地域間の更なる連携深化の重要性を訴えた。香港貿易発展局游紹斌日本首席代表が、香港が中国大陸とのビジネスのゲートウエイであるだけでなく、アジアの国際金融センター、国際物流センターの機能が依然として強健であること、香港を中継地とした日本と東アジア市場との新たな連携の可能性に対して大きな期待を寄せていることを語った。国立中興大学(台湾)EMBA袁鶴齡教授(中華台商研究学会理事長)が、TSMCをはじめとする台湾系企業の対外直接投資が地域経済にもたらす影響や課題について独特な見解を示唆した。最後に、東アジア産業界、企業からみた日本そして北部九州の直接投資先としての魅力と問題点、投資促進のための施策について、パネラー各位から具体的なメッセージが寄せられた。
第二セッションでは、「企業の持続発展と事業継承」をテーマに、中華ビジネス研究センターの国際共同研究プロジェクトの成果報告を兼ねてモデレーター王効平教授の趣旨説明を受けて討議が繰り広げられた。「100年経営の会」の前田泰宏顧問(元中小企業庁長官)が、日本長寿企業の長寿要因、特に事業継承の特色について詳説した。中国人民大学中国民営企業研究センター黄泰岩研究センター長(兼中央民族大学中国興辺富民戦略研究院長)が、中国における長寿企業の存在、民営企業の主要事業継承パターンと課題について具体的な実態調査データを元に紹介した。義守大学(台湾)企業管理学部の鍾喜梅教授が、台湾の長寿家族経営企業の事例を通じて、台湾企業事業継承の成功要因と課題を論じた。中国評論通訊社(香港)の王平副社長(兼中評智庫上席研究員)が、中華社会の宗族宗法観念に関する研究成果を踏まえて、香港中華系企業事業継承における最新の動向を紹介した。最後に日本の長寿企業の多さと関係調査研究成果に注目し、長寿要因に関する調査研究成果共有の意義について議論が交わされた。
総合質疑ではフロア参加者からの興味深い質問が相次ぎ、パネリストから丁寧な回答がなされた。主催者、パネラー共に久々の対面コミュニケーションに大きな満足感を覚えた有意義なセミナーであった。