「新春特別セミナー2025」を開催しました
北九州市立大学
中華ビジネス研究センター
新春特別セミナー2025 成功裡に終了
テーマ:東アジア地域企業の経営国際化と持続発展
日 時:2025年3月15日(土) 9:30-17:30
会 場:北九州市立大学北方キャンパス フランキー・ウー アジア国際交流ホール
中華ビジネス研究センターは2014年8月1日に設置され、早10年が経過した。学術交流の促進と国際人材の育成に寄与することを目的とし、中華圏をはじめとする東アジア地域のビジネス教育研究機関と幅広い交流ネットワークを構築するとともに、地域間交流関係の強化に努めてきた。
新春特別セミナー2025はセンター設置10周年を祝う記念すべき企画にあたり、(公財)北九州観光コンベンション協会の協賛を得て、「東アジア地域企業の経営国際化と持続発展」をテーマに、2025年3月15日(土)にフランキー・ウー アジア国際交流ホールにて成功裡に開催された。
セミナーは柳井雅人(やないまさと)学長の代表挨拶から始まり、第1セッションは「長寿企業の国際比較研究」の成果報告を、第二セッションは「東アジアビジネス展開と文化との関係性」の議論を、日中両言語逐次通訳の形で進められた。司会は本学マネジメント研究科第16期修了生野口莉加氏が務めた。
第一セッションのモデレーターは本中華ビジネス研究センター長王効平(おうこうへい) が務め、長寿企業の国際比較研究の意義とプロジェクトの成果を振り返ったうえ、「長寿企業の持続発展の秘訣」を共通テーマに専門家各位の個別プレゼンを導いて行った。共同研究者の黄泰岩氏(中国人民大学中国民営企業研究センター長兼中央民族大学興辺富民戦略研究院長)は中国商務省の公式調査資料と中国老舗企業(老字号)3社の革新と発展に関する事例研究の成果を紹介し、中国における体系的な発掘調査研究の必要性を唱えた。辻田素子氏(龍谷大学経済学部教授)は京都老舗企業研究の代表的研究者として、TDBの調査報告を基に日本の老舗の実態を概説した上、「京都老舗の会」と共同で京の老舗を対象にしたアンケート調査の分析結果を共有し、老舗2社の事例を用いてファミリー・文化・地域の視点からその長寿要因を探る報告を行った。王平氏(中国評論通訊社(香港)副社長兼中評智庫基金会上席研究員)はアヘン戦争以降英国の植民地支配下長い商業発展の歴史と世界に冠たる自由経済の地位を有してきた香港にあって、旧タイプの大富豪が多く、長寿企業が希少である原因を詳細な歴史資料をもとに詳述した。最後に北九州地元老舗企業役員の松永康志(シャボン玉石けん株式会社取締役営業本部長)は、「健康な体ときれいな水を守る」という企業理念を安心安全な商品作りと幅広い社会貢献活動に貫徹させてきたことを豊富な映像資料を用いて紹介した。
第二セッションのモデレーターは、香港貿易発展局東京事務所長、本学マネジメント研究科非常勤講師の伊東正裕氏が務め、最初に異文化・多文化理解の重要性、華僑(中華)系企業をパートナーにした東アジアビジネス開拓スキーム活用の可能性を自らの実務経験を踏まえて問題提起した。劉宏氏(シンガポール南洋理工大学副学長兼公共管理大学院長)は「多国籍ネットワーク、華人文化、ガバナンス戦略:シンガポール華人系企業の地域化実践」をテーマに、移民多国籍主義理論に依拠して「商業多国籍主義」という概念を提起し、東西二元対立の視点からではなく、西側のビジネスモデルとの創造的な融合と再生に着目すべきとの問題提起を行った。袁鶴齡氏(国立中興大学管理学院(台中)EMBAプログラム教授、中華台商研究学会理事長)は、文化の違いが企業の管理、意思決定、コミュニケーションモデルに影響を与え、台湾系企業のグローバル展開における異文化適応戦略を理論と実践の両面から考察した。Wichai Kinchong Choi氏(タイ王国カシコンバンク上級副総裁、国際事業本部統括)は「日本企業のタイ向け直接投資〜機会と挑戦」をテーマに、タイの外資政策と投資環境の変化に伴う外資企業進出の状況、特に日系資本投資分布の特徴、機会とリスク(挑戦)について分析し、合わせて建設的提言を行った。最後に田中裕弓氏(株式会社リョーワ代表取締役、本学マネジメント研究科同窓会組織「マネジメント研究会」前会長)は、創業50年をこえる地元企業の代表として、伝統と革新のシナジー効果を継続追求する持続発展戦略の再構築、具体的には積極的海外事業展開、DXセレクションの推進、外部人材の登用に関わる取り組みを紹介した。
最後の全体討論では約40分間にわたって、両セッションのパネラー同士の論点、問題点の再確認がなされ、セミナー参加者からも沢山の質疑、意味深い見解が出された。天候が悪かったにも関わらず、多くの参加者を迎え、センター設置10周年の記念すべきセミナーとなった。